Vande Bharatでムンバイからナシークへ
2026年9月17日から22日まで、インドのムンバイとナシークにいました(現地5泊6日。帰りは機中泊で、23日の朝に帰国)。この記事は、その旅の連載「ムンバイとナシークの6日間」の1本です(現地の話)。一覧は、記事の下の連載タグからどうぞ。
2026年9月20日の朝6時20分、ムンバイの駅を出る列車に、3人並びの席で乗っていました。私と、パートナーと、友人です。行き先はナシーク。ムンバイから北東に188km、2時間半ほどの町です。同じ列車の、同じ並びの席。でも、隣に座っていた友人は、私とはまったく違う理由でこの列車に乗っていました。チキンの焼き方を学びに来ていたんです。

乗ったのは、9月20日の朝
列車の名前は、Vande Bharat(ヴァンデ・バーラト)。インドの新しい特急で、番号は22223。ムンバイのCSMT駅を6時20分に出て、Nashik Road駅に8時57分に着きます。座席はChair Car(エアコン付きの座席車両)で、私たちの車両はC4でした。188kmを3人で2,225.40ルピー、1人あたり740ルピーほどでした。これに車内食が含まれていて、出てきたのはオムレツと、ポテトと、パンでした。車内はエアコンがよく効いていて、羽織るものが1枚あるといい、というくらいでした。
帰りは翌日の9月21日、20705という別の列車です。Nashik Roadを11時に出て、CSMTに14時15分着。予約は往復とも9月12日、出発の8日前です。帰りの便は、その時点でほとんど埋まっていて、11時発のものしか取れなかったことが、当時のやりとりに残っています。こちらは3人で2,480.40ルピーでした。行きより255ルピー高い。調べてみると、行きと帰りは、そもそも別の路線の列車でした。行きの22223はムンバイからシルディという町へ向かう列車で、帰りの20705は、もっと東のナンデッドという町から600kmを走ってくる列車。同じ区間を、同じ名前の特急で往復したつもりでしたが、乗っていたのは別のものでした。
値段の違いも、そこから来ているのだろうと見ていました。でも、これは外れでした。予約の書類の内訳を見ると、運賃そのものは、行きも帰りも3人で1,722ルピー(1人574ルピー)で同じです。違っていたのは車内食のほうで、朝の便の行きが468ルピー、昼の便の帰りが723ルピー。255ルピーの差は、ぜんぶ食事の差でした。
海沿いから、山を越えて、高原へ
ムンバイは、インドの西側、海に面した町です。そこから北東に向かうと、途中で山を越えます。越えた先がデカン高原で、ナシークはその上にあります。2時間半のあいだに、海抜ほぼゼロのところから、高原の上まで登っていたことになります。この列車は、2023年の2月に走りはじめたばかりだそうです。16両編成で、火曜日以外の毎日、1日1往復。私たちが乗った9月20日は日曜日でした。すごく快適でした。2時間半だったんですけど、友人と話したり、パートナーと話したりしていたら、あっという間でした。
友人の目的
友人は、バーベキューを仕事にしています。ピットマスター(バーベキューの焼き手)です。「BBQ牧師」という名前でYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@pastorsbbq)もやっていて、この旅も動画になっています。旅の動画の中で、友人は目的をはっきり言っています。「この旅の目的は、私がピットマスターとして、インドでチキンを学びに行くこと」。ビーフや豚は、お客さんに出せるレベルでおいしく焼けている自信がある。でも、チキンは難しくて、奥が深くて、まだ研究の余地がある。バーベキュー大会でも、チキンはひとつの課題になる。だからチキンを学びに、今回はインドに来た。そう話しています。
ふだんの友人の焼き方は、こうだそうです。仕込みに時間をかけず、スパイスを振ったら、あまり置かずにすぐグリルへ。120度くらいの低めの温度で、1時間半から2時間かけて焼く。インドで見たのは、その逆でした。ヨーグルトとスパイスにしっかり漬けこんでから、タンドール(壺の形をした窯)の高温で、短い時間で焼き切る。順番も、温度も、まるで違います。
ムンバイでは、タンドールで焼いたチキンを出す店に行って、3種類のチキンを食べ比べていました。食べながら、「これはどのくらいの時間をかけて焼くんだろう」と言っている。厨房まで見せてもらえたらいいんだけど、とも。ナシークに向かう列車の中でも、たぶん友人は、着いたら何を食べるか、どこで窯を見られるかを考えていたはずです。実際、ナシークに着いたその日の昼に、友人は窯のある店を見つけて、「撮ってもいいですか」と聞いて、焼いているところを見せてもらっています。私も、その場にいました。この話は、別の記事で書きます。
では、私は何をしに行ったのか
友人の目的は、ひとことで言えます。チキンを学びに。では、私は何をしに行ったのか。
そもそも今回のインド行きは、この友人の誘いから始まりました。正直に言うと、最初はインドに行くのが怖かったんです。YouTubeでいろいろインドの動画を見ていたんですけど、やっぱり、お腹を壊すと言っている人が多かったので、自分も同じようにお腹を壊すのではないかなと、心配していました。それでも行くと決めて、帰ってきたいまは、行って本当に良かったと思っています。ただ、「誘われたから」のその先、自分は何をしにナシークまで行ったのか。
行くと決めた理由は、やっぱり、まだ若いうちに一度は行きたい、というのがありました。40代のうちに行っておけば、体力的に大丈夫だろう、と。ナシーク自体は、友人の提案でした。インドの片田舎みたいなところにも行ってみたかったので、ちょうどいいなと思いました。
旅の記録を見返すと、私がこの列車のために使った時間のほとんどは、乗る前にありました。インドの鉄道の予約サイト(IRCTC)で、アカウントを作るところから詰まりました。「Unable to perform this transaction(この処理は実行できません)」という表示が、何度も出る。住所の欄がインド国内の住所を前提に作られていて、日本の住所が入りません。「Others」を選んだり、現地の地名を入れたりして、なんとか通しました。登録料は100ルピーと税。メールとSMSの認証を抜けて、ようやくアカウントができました。予約でも、「Invalid Passport details(パスポートの情報が正しくありません)」で弾かれています。原因は、保存してあったパスポート番号が、伏せ字のまま送られていたこと。入れ直したら通りました。座席のクラスも、記号を全部調べて比べました。CC、EC、2S、SL、3A、2A。短い距離ならCCかEC、と決めるまでに、それなりに時間がかかっています。つまり、3人ぶんの席を取ったのは、私でした。
同じ時間に、入っていたもの
列車に乗っているあいだ、友人の頭の中には、チキンがありました。同じ駅から、同じ列車で、同じ車内食を食べて、同じ駅で降りました。記録に残るのは、そこまでです。時刻と、列車の番号と、金額。3人とも、同じ記録になります。でも、その2時間半の中に入っていたものは、たぶん3人とも違います。友人はチキンのことを考えていた。パートナーは、前の日にインドに着いたばかりでした。
動画の中の友人は、動きが速いです。店を見つける。入る。聞く。食べる。次に行く。迷っている時間が短い。目的がはっきりしていると、こうなるんだなと思います。このブログは、「自分は、何かを作っていい」というのを、裏のテーマにしています。友人は、まさに作る人として、インドに来ていました。焼き方を見て、自分の焼き方と比べて、帰ったら試す。旅そのものが、作ることの途中にあります。私は、その隣の席に座っていました。
列車が動き出したときは、3人一緒に行けるのか、バタバタしていたので、安堵のほうが大きかったです。
帰ってきてから
日本に戻ってから、友人が旅のあいだに撮っていた動画を見ました。いまは友人のチャンネルで公開されています。
列車に乗る前の、朝5時台の駅前が映っています。まだ暗い。大きな交差点を、人の流れにまじって渡っている。そこから駅に入って、長いホームを歩いて、私たちと合流する。私が見ていなかった、友人の側の朝です。しかも友人は、その前の夜、泊まっていたドミトリー(相部屋の安宿)が暑くて、ほとんど眠れていませんでした。寝汗をかいて起きるたびに、水のシャワーで体を冷やして、また少し寝る。それを3、4回繰り返して、明るくなる前の駅に来ている。同じ列車に乗るまでの時間も、乗る前の夜も、友人と私とでは、まったく違っていました。
次に誰かと旅をするとき、自分は何をしに行くのかを、先に言葉にしておけるかどうか。それは、まだ分かりません。
行く前に知りたかったこと
- やったこと:乗ったのは、2026年9月20日朝にムンバイのCSMT駅を出る特急列車Vande Bharat(22223)のChair Car(エアコン付き座席車両)で、着いたのはNashik Road駅でした。帰りは翌21日、別の列車(20705)での移動でした。
- かかった時間:行きはムンバイ発6時20分・ナシーク着8時57分で、2時間半ほどでした。帰りはナシーク発11時・ムンバイ着14時15分でした。
- 料金:行きは3人で2,225.40ルピー(1人740ルピーほど)で、これに車内食(オムレツ、ポテト、パン)が含まれていました。帰りは3人で2,480.40ルピーでした。内訳は、運賃が行きも帰りも3人で1,722ルピー(1人574ルピー)、車内食が行き468ルピー・帰り723ルピー、IRCTCの手数料が切符1枚ごとに35.40ルピーで、往復の差の255ルピーは、ぜんぶ車内食の差でした。これ以外に、IRCTCのアカウント登録料として100ルピーと税がかかっています。日本円では、往復3人分で9,105円(行き4,201円・帰り4,683円・手数料221円)、1人あたり3,035円を、PayPayで割り勘にしています。
- 持ち物・服装:車内はエアコンがよく効いていて、羽織るものが1枚あるといいくらいでした。
- 予約:予約での手間は、インドの鉄道予約サイト(IRCTC)でアカウントを作るところから発生しています。住所欄はインド国内の住所を前提に作られていて日本の住所が通らず、「Others」を選んだり現地の地名を入れたりして登録を通しています。予約時には、保存していたパスポート番号が伏せ字のまま送信されたため「Invalid Passport details」で弾かれ、入れ直して通りました。座席クラスも、CC、EC、2S、SL、3A、2Aの全部を調べて比較しました。3人分の予約は、私が行いました。予約した日は往復とも9月12日(出発の8日前)でした。帰りの便は予約の時点でほとんど埋まっていて、11時発しか取れませんでした。
- 不器用でも/初めてでもできるか:アカウント作成時に「Unable to perform this transaction」という表示が何度も出たり、保存されていたパスポート番号の不備で予約が一度弾かれたりしました。初めてだと、そうした手戻りが起きる手続きでした。
- やる前に不安だったこと/やってみて:お腹を壊すのではないかと心配していた。列車が動き出したときは、安堵のほうが大きかった









